安城市が運営する公的なビジネス支援拠点「安城ビジネスコンシェルジュ(ABC)」は開設1周年を迎えて1年間の支援事業の展開の報告と養老孟司氏による基調講演『経営者に捧ぐ「バカの壁」』が10月4日(木)に開催されました。
安城ビジネスコンシェルジュ(ABC)は安城駅前の立地の良さと図書情報館との併設の利点もあり、ビジネスの情報拠点として「日本一賑やかな支援機関」を目指しており、毎月多くのビジネス相談で大盛況、開催からたった1年なの??と言う気がします。私自身、各種申請手続相談、セミナー、展示会、ホームページ等、さまざまなビジネス課題を相談して、いつも大変お世話になっています。
また、図書情報館は全国でも珍しい、おしゃべりができ、食べ物OKの施設で、ビジネス以外でもさまざまな用途で活用されています。今後、安城市発展のためにますます、多目的に活用されさらなる進化と成長を期待しています。
ところで、本題の基調講演『経営者に捧ぐ「バカの壁」』を聞いて感じたことを少し書いてみます。養老先生はとてもユーモアがあって、また頭の良い方で、現代社会を鋭い視点で見ているのだなと感じました。やっぱり、脳医学を専攻されている方なので視点が違います。
東ロボ(東大合格を目指すロボット)を開発した新井紀子 著書「AI VS 教科書が読めない子供たち」を紹介され、その中の『読解力』について、養老先生が少し話をされていました。その中で注目すべきは、AI(人工知能)は統計的手法を用いて学習を積み重ねてみても、とかく文章読解力については、現在まだまだ人間にかなわないという事実です。
そしてこの、国語『読解力』が飛躍的に伸びる時期は中学生の頃らしくて、逆にこの時期を過ぎるとなかなか伸びなくなるとのことです。
『読解力』を伸ばすためには何をすればよいか? たとえば、たくさん読書をすればよいかと言えば、必ずしも因果関係があるわけではなく、他の事例を調べても何ら因果関係が見つからなかったそうです。
どうやらこの『読解力』を伸ばせるかどうかは、頭の中の『心の問題』と関係がある様です。人は、自分が好まないことはやりたくない、やる気が出ない、拒否する...中学生は自我が芽生えて自己が形成される大切な時期なので、『心の問題』をクリアできるか否かが『読解力』を伸ばせるかどうかのカギなのだそうです。つまり、理解できない、わからないのではなくて、わかろうとしないことが原因らしい。このあたりが養老先生が言う「バカの壁」につながるのかもしれませんね。
大人でも政治の話や野球の話と同じで、嫌いな政党やチームのことを理解せよと言われても、自然と頭が拒絶してしまうことと同じなのかもしれません。だからと言ってかならずしも、自分と違う考えを理解しなくてはならないわけではありませんが...
では、この『読解力』、人の言葉や気持ちを汲み取り理解する力などが欠落するとどうなるか、すなわち倫理や道徳の欠落へとつながっていきます。そんな中で、AIはビッグデータから論理的に分析する力に優れていて、何でも論理的に処理して答えを導きますが、一方、五感や感情は基本的に存在しません。AIに対して人は五感があるからすばらしくて、そこが人間らしさだと言えます。
現代社会、特に都会生活ではいっさいのムダが排除されて、スマホ、コンビニ等、どんどんと生活が便利となる反面、自然に触れる機会がめっきりと減少して、人の感受性、五感、つまり本来の感じ取る力がどんどんと衰えていく傾向があります。
人間がよりよく暮らすには、AIや科学技術の進歩は道具としてうまく利用しながら、人ならではの読解力を高めてリアルな人とコミュニケションする理解力・対話力を高めることが大切ですね。時には先祖や亡くなった人に手を合わせたり、植物や生き物や自然に触れ合うなどリフレッシュして、現代のさまざまなストレスから解放されて、心から楽しまなくてはなりません。
目まぐるしくてとても便利になったけれど.....本当に豊かさとは何か? この講演会でいろいろと考えさせられた気がします。